ヘッドボイス作りの全て
この記事はVocalMagazineWebにて公開している連載、第41回:ヘッドボイスとは“共鳴声”である【解説編】の補完記事です。ヘッドボイスのあれやこれやについて、色々な条件を細かく検証していく内容です。連載本編の方でヘッドボイス作りが上手く行かなかった人は、この“細か~い成立条件”の中に答えがありますので頑張ってください。大きなトピックは3つです。
1.声帯と呼気の条件
・息を口からも鼻からも漏らさない
・呼気はゆっくりにして巡回させる
・声帯位置より声帯張度に気を配る
・ヘッドボイスは息のスピード感が重要
2.各部位別の動作解説
・唇
・舌
・軟口蓋
・喉頭
・声帯
3.トラブルシューティング
・息漏れの音が聞こえる
・共鳴が深くならない
・響きがくぐもった感じがする
・そもそも裏声が出ない場合の攻め方
以上の点についてまとめていきます。
1.声帯と呼気の条件
ヘッドボイスの発声における声帯と呼気の状態についての解説になります。
(1)息を口からも鼻からも漏らさない
ヘッドボイスは共鳴の響きの成分100%で成り立っていると言えます。共鳴の響きを溜めるという発想のもと、呼気成分を漏らさない感覚が必要です。では「呼気を漏らさないということは息は少なくていいのか?」というとそれは違います。
(2)声帯までは呼気量は多く
ここで必要になるのが、”声帯に当てる呼気圧と、実際に口や鼻から漏れる息の量は別に考える“ということです。ヘッドボイスであろうがどんな発声であろうが、声量を出すなら声帯に当てる息の量は多くします。
(3)息漏れ量:チェスト<ヘッド<ファルセット
それで実際の息漏れ量はどうなのかというと、ヘッドボイスはファルセットに比べれば息漏れは少なく、チェストボイスと比べれば息漏れは多くなります。これは声帯の開閉具合≒声門閉鎖≒声帯位置によります。結果としては息漏れはある程度発生しますが、共鳴を充満させる必要があるので意識としては「極力漏らさない=溜める」でちょうど良くなります。
(4)声帯の様子~位置と張度~
①声帯の開閉具合
ヘッドボイスは裏声なのでチェストボイスである地声に比べれば、声帯は構造上しっかり閉じません。声帯位置は「閉じ気味」です。なので結果として息漏れはある程度起こりますが、意識としてはパワー不足の人に限っては「閉じようとする」と思っていても良いでしょう。
②声帯の張り具合
ここで重要なのが、声帯張度(強度)は「強く」ということです。声帯の開閉具合と張り具合は別物です。声帯の張り・弾力性は「喉ちんこ(軟口蓋)の引き合い」で作ります。軟口蓋にハリがあることで共鳴は綺麗に充満できます。この声帯の張り・弾力性と、共鳴の充満を手っ取り早く叶える方法として、本編では「鼻にためる」を紹介しています。
③位置より張度に気を配る
ヘッドボイスに限らずですが、声帯の開閉具合を意識しすぎると”声帯をダイレクトにいじる作業“となり、いわゆる「喉締め声」になるリスクが上がります。それに対して声帯の張り具合の方は「喉ちんこ(軟口蓋)」で作るため、このリスクを回避することができます。というか、張りを整えると声帯位置も適切な開閉具合になってくれる節があるため、どんな人でも位置より張度に気を配ることをまずオススメします。
(6)息はゆっくり回す
声帯で漏れた息をどうするかにヘッドボイスの個性がかかってきます。実際には声帯でほとんど音声に変換され共鳴を得ながら拡散されるため、漏れた息ではなくて共鳴をゆっくり循環させるという感覚が一番的を得たものになります。発声のベクトルを前方ではなく、後方&上方に感じてグルグルゆっくり回し、鼻先に共鳴を溜めていく感覚になります。この感覚が「鼻に溜める」になります。
まとめ:ヘッドボイスは息のスピードが重要
他の声区と比べた時にヘッドボイス特有の特徴となるのは、共鳴の成分と呼気のスピードを遅くすることになります。ヘッドボイスと共鳴の関係については連載本編で説明した通りです。今回説明した部分を更に詳細に表にまとめると以下のようになります。
ヘッドボイス | 詳細条件 | 動作意識 | 結果 |
息漏れ量 | ①鼻腔から ②口腔から | 極力漏らさない 極力漏らさない | ほぼ無し 少ない |
軟口蓋の挙動 | ①軟口蓋位置 ②軟口蓋張度 | 「鼻に溜める」 | 高め 強め |
声門閉鎖圧 | ①声帯張度 ②声帯位置 | 強める 閉じようとする | 強め 閉じ気味 |
声門呼気圧 | ①呼気量 ②呼気速度 | 多く当てる 遅く流す | 多い 遅い? |
この表に基づいた更に詳しい解説は、次のトピックに続きます。
2.各部位別の動作解説
と思いましたが、長くなりそうなので今回はここまでにします。トピック2と『3.トラブルシューティング』は順次書いていきますので更新をお待ちください。書いたらここに案内をします。
連載本編案内
連載本編では各声区について、知識と理論を【解説編】で、実際の練習メニューを【実践編】で、それぞれ2本立てで公開しています。
