この記事は、VocalMagazineWebにて公開している連載、第39回:料理に例える歌声の“成分”まとめ!声区の作り分けに向けて の補完記事になります。当該記事は連載第36回で扱った声門閉鎖の「位置と張度(強度)」問題、連載第37回で扱った呼気の「量と速度」問題の重要性と必要性について、“料理に例えて”解説しています。

まず連載第39回では、『呼気が「裏声」「地声」両方の成分になり得る』ことについて触れていて、実際に使い分けられるシーンが以下になります。
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呼気は「裏声」「地声」両方の成分
(1)呼気成分を多く含む「ファルセット」は裏声の1つです。なので”呼気成分は裏声の成分“です。同じように呼気成分を多く含む地声である「ウィスパーボイス」は、ゆえに”裏声チックな地声“と言えます。事実、声区融合(ボイスミックス)をするとき、この2つの声区は比較的簡単に繋げることができます。簡単に言えば声帯が「開き気味」で共通していて、ほぼ同じ動作になるからです。

(2)ところが呼気に関しては、強めの地声である「チェストボイス」っぽくさせるアイテムにもなります。……覚えていますか?「ベルヌーイ効果」です。呼気の流れによって声帯が吸い寄せられて声帯が動作を始める原理です。

これは声門閉鎖圧が、声帯の「位置」と「張度」に分かれ、呼気圧が「量」と「速度」に分かれることに大きく関係してきます。
整理すると、呼気は「声帯が開き気味の位置」で「呼気量が多い」時には「ウィスパーボイス・ファルセット」のアイテムとして働き、「声帯が閉じ気味の位置」で「呼気速度が速い」時には「チェストボイス」のアイテムとして働くことになります。
「呼気量・呼気速度」と「声帯位置・声帯張度」
呼気の「多さ」と「速さ」、そして声帯の「閉じ具合」と「張り具合」は各声区を習得する上で、しばしば”最後の砦“になります。『いくら練習してもどうしても思い通りの発声にならない』ケースの原因はのほとんどは、「呼気量」「呼気速度」をまとめて「呼気圧」として扱い、「声帯位置」「声帯張度」をまとめて「声門閉鎖圧」として扱っているからです。
”塩胡椒“と”砂糖醤油“
これは「塩胡椒」と「砂糖醤油」に似ています。それぞれが既にブレンドされている状態で商品として売っていますが、発声における各声区のコントロールは、「塩・胡椒」「砂糖・醤油」のそれぞれの配分量を自分で変える必要があります。

例えば市販品の「塩胡椒」の配分量は「塩5g・胡椒4g」だけど、ヘッドボイスに必要な配合量は「塩7g・胡椒1g(呼気量7・呼気速度1)」だったりします。
なので、まとめて「呼気圧」と「声門閉鎖圧」として捉えている間は、各声区を完成させるために必要な「呼気量・呼気速度」と「声帯位置・声帯張度」の正しいブレンド量が手に入ることはない=各声区の歌い分けが一向に完成しないということです。
第36回:声門閉鎖の「位置と強度」で完全無欠なコントロールを!
第37回:呼気圧の「量と速度」で完全無欠な声帯コントロールを!
では、以下のイラストのように各ブレンド量を調整すると発声がどう変わるのかを解説しました。

連載の方は次回、第40回より「声区シリーズ」に突入していきます。各声区(=〇〇ボイス)の解説にて、この点についても詳しく触れながら解説していきますのでお楽しみに。