○○ボイスの分類「声区表」がたくさんある例と理由と使い方【VMW版-補完】

「声区」は色々な分け方がある

 この記事では、○○ボイスの分類である「声区せいく」をまとめた「声区表」に色んなバージョンがあることについて、実際の例と複数ある背景、それを学習者・指導者はどう捉えればいいかについて解説しています。VocalMagazineWebにて公開している連載、第40回:○○ボイス「声区」発声の分類を一挙紹介!の補完記事になります。

筆者考案の「声区表」は6声区

 まずは筆者がレッスンで使っている声区表は以下です。筆者は6声区に分けています。

【声区表 詳細ver.(tOmozoの分け方)】
【声区表 詳細ver.(tOmozoの分け方)】


「声区表」のバージョン色々

 筆者が見聞きしたことがあるものから、考えられるものまで、シンプルなものから順に並べて解説してみます。7声区まで登場します。

2声区:「地声」と「裏声」

裏声
地声

 「〇〇ボイス」という名称を使わずに、「地声」と「裏声」だけに分けた呼び方もされます。進めていくうちにこれだけだと”的を得た“発声が叶わないので、細かい分類になっていきます。

3声区:「チェスト」と「ファルセット」「ヘッド」

裏声ヘッドボイスファルセット
地声チェストボイス

 地声は「チェストボイス」、裏声は「ファルセット」「ヘッドボイス」に分ける分類です。最も基本的で実用的なのがこの分類です。裏声を2種類に分けることによって裏声の理解が進みます。声区それぞれの解説は連載本編でお伝えしています。

4声区①:基本の3声区+ウィスパーボイス

裏声ヘッドボイスファルセット
地声チェストボイスウィスパーボイス

 筆者が考案して使っている声区表の簡易バージョンです。基本の3声区に、一般的には声区に組み込まない「ウィスパーボイス」を加えたものになります。これで地声が2つに分かれることになります。ウィスパーボイスを入れる理由については連載本編でお伝えしています。

4声区②:基本の3声区+エッジボイス

裏声ヘッドボイスファルセット
地声チェストボイス
エッジボイス

 チェストボイスより低い音域に分類されることがあるのが「エッジボイス」です。“最低音域の発声”とされていますが、実際には高音を整えるために使うこともあるため、「音域による固定観念は持たない方が良い」とも言えます。

5声区①:4声区+ミックスボイス

裏声ヘッドボイスファルセット
ミックスボイス
地声チェストボイス
エッジボイス

 基本の3声区にエッジボイスを加えたまま「ミックスボイス」を加えるならば5声区の分類になります。一般的に浸透している声区表はこれに近いと思います。ミックスボイスは色々な角度から色々な捉え方ができるため、書き入れる場所に迷いますが今回は表で示した位置に置きたいと思います。

5声区②:基本の3声区+超高音域発声

裏声スーパーヘッドホイッスル
ヘッドボイスファルセット
地声チェストボイス

 基本の3声区に加えて、ヘッドボイスとファルセットの超高音域発声である「スーパーヘッドボイス」と「ホイッスルボイス」を入れた5声区の分類も見かけます。が、この2つを入れるくらいなら代わりに「エッジボイス」と「ミックスボイス」を入れるべき、というのが筆者のスタンスです。筆者がこの2つに関して特別言及をしない理由は連載本編でお伝えしています。

6声区:基本3声区+ウィスパー+エッジ+ミックス

裏声ミックスボイスヘッドボイスファルセット
地声チェストボイスウィスパーボイス
エッジボイス

 筆者が考案して使っている声区表の”詳細バージョン″です。基本の3声区+エッジボイス+ミックスボイスに「ウィスパーボイス」を加えた6声区表です。並べ方に工夫が施してあります。これで各声区を完成させるための材料が“大体7割”は揃う形になります。

7声区:ミックスを「ハード」「ソフト」に細分

裏声ハードミックスヘッドボイスファルセット
地声チェストボイスソフトミックス?ウィスパーボイス
エッジボイス

 ミックスボイスを「ハードミックス」と「ソフトミックス」に細分した7声区表も考案中ですが、ここまで来ると既存の声区表だけでは表現し切れません。なぜかと言えば既存の声区表は「声門閉鎖の強さ≒声帯の開閉具合」で分類しただけの表でありミックスボイスを含む各声区の完成には他の要素が必要になるからです。

既存の声区表には含まれない重要な発声の材料とは?

・『声門閉鎖圧』の細分
①声帯位置、②声帯張度

・『呼気圧』の細分
①呼気量、②呼気速度

・「鼻音」の成分

 この各声区を完成させる材料については、これまでの連載の中でも触れていますが、詳しくは「声区シリーズ」の中で解説していきます。

1声区:「無声区論」

 最後はまさかの「1声区」です。

 「そもそも声区なんてあると思っちゃいかん!」という論調で声区を設けるべきでない、という主張もあるようです。これは「最終的には声区を感じることのないくらい滑らかな発声をするべきである」という理由によるものです。この論に対する是非を解説します。

是:良いところ

・上記の理由は理に適っていて、つまりは「ミックスボイスで歌唱すべき」という意味になる。ボイトレの側面で見れば一番テクニックが必要になる発声処理であり、習得できるに越したことはない。習得できれば実際に身体的にも聴覚的にも声区の存在を感じない感覚になるため、それを“正解”とすると1声区論は間違いではない。

非:悪いところ

・上記の理由はあくまで最終的な理想形であって、現状の発声が声区が分かれてしまっていたならば、現状の発声バランスに対する配慮もフォローも全くできないことになる。
・上記の理想形は、つまりは「全音域をミックスボイスで歌うべき」という意味合いが強くなり、例えばヘッドボイスやファルセットが持つ音色の魅力を歌唱に活かすようなアプローチを無視することになる。
・例えば「ヨーデル」は、明確な「地声」と明確な「裏声」を切り分けて歌うのが個性になるジャンルなので、この「無声区論」では習得が不可ということになりかねない。


まとめ~声区習得の意味~

 このように声区の分類には色々な考え方があり、発声の状況や音楽ジャンル、指導者によっても色々な分類が使われます。「声区」の習得は「声区融合」をするのが主な目的になりますが、加えて大事なのは「声区の個性は音色の個性になる」ということです。実際の歌唱での音色変化のために色々な発声を身に付けるべきです。この点において、声区の分類は多く・細かく捉えておいた方が良いと言えます。最初は少ない分類からどんどん増やしていき、消化できるようにしましょう。

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