4.2. 注意欠如・多動性障害/ADHD

4. 発達障害


2. 注意欠如けつじょ多動性たどうせい障害/ADHD

 「注意欠如・多動性障害(ADHD:Attention Deficit Hyperactivity Disorder)」は、かつては「注意欠陥・多動性症候群」と呼ばれていました。レッスンをしている上での肌感覚では、アスペルガー症候群よりADHDの人の方が多くいらっしゃってます。

ADHDの症状

 「注意力が散漫でケアレスミスが多い・部屋が片づけられない」などが主な症状で、特に幼少期は「落ち着きが無い」などの症状が問題となりやすいです。
 僕自身もADHDの行動パターンがある程度出ていて、良く忘れ物をするし、乗って来た車に乗らずに歩いて帰ったり、冷蔵庫に箸が入っていたり(笑)、意識が飛んでいる間に妙な行動をしていることが多いです。鍵もよくどこかに置いて来たりで家に入れないことがあったので、家の鍵・教室の鍵・車の鍵などは全部首からぶら下げて持ち歩くことで失敗が無くなりました。幼少期は、入学式などで「ジッと座らさせられている」のが苦痛で苦痛で、本当に「このまま死ぬんじゃないか…」と思ってました(笑)

軽度なADHDと音楽

 音楽に関係することで言えば「楽譜を家に忘れてきたり、教室に忘れていったり」と、ADHDの症状が軽度の場合、直接問題になるのはそれくらいでしょうか。そもそもレッスンには興味があって来ているものだし、意識が散漫になるということはあまり見受けられないです。
 強いて言うなら、ピアノを弾くときは右手・左手に意識を働かせないとならないので「右手意識したら左手から意識飛ぶ」ことは見られますが、これは健常者でも同じです。これ自体がADHD特有の症状であることは無いと思います。むしろピアノの右手左手の不自由さは、運動神経や、思考回路の少なさ、の方が問題になっていると思います。

重度なADHDと音楽

 ただ「マルチタスク」が求められるピアノは、気が色々な部分に取られやすい楽器であることは確かです。ADHDの症状も程度問題ですので、重度となると困難が出てきます。右手・左手、足でのペダル操作、楽譜を見る、音を聴く、フォームを気にする、全部を一気にやるのは、重度な方には難しい問題となることがあります。
 やはりこの時、何が味方になってくれるか?と言えば「運動神経によって身体が覚えていてくれて、勝手に動くかどうか」、「一時記憶によって直前にやった動作や情報を覚えているかどうか」が大きいと思います。一つの動作が無意識下でも自動化されるように、まず右手だけ集中して練習する、というような対処法がより重要になるかと思います。

発達障害と「こだわり」の強さ

 それから、ADHDにもASDにも見られる「こだわりの強さ」ですが、例えば「最初に覚えた指使いからなかなか変更できない」といったケースなどが、もしかしたらこれに当てはまる可能性があります。
 ただ、ADHDとASDとではこだわりの現れ方に違う傾向が見られることと、単なる運動神経による柔軟さの問題の可能性もあることから、一概にはなんとも言えないです。

作業量とADHD

 歌の時はどうでしょうか?歌や管楽器演奏は1度に処理する音は1音だけ(単旋律)なので、意識が他に取られることが少なくなります。マルチタスクが苦手な方はピアノより向いていると言えます。

 でも上手い歌を歌うには、自分以外のメロディーなど他の楽器の存在を常に感じながら歌うことが必要になります。これができるかできないかは発達障害は関係がなく、むしろ「音楽センスの有無」が問題になっていると思います。

 他には「学習障害」で触れている「空間認識能力/図形が得意かどうか」について、ADHDの場合はこれが乏しく苦手な人が多く見られ、音程やリズムを把握する力に影響が見られます。


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