「息・鼻が詰まる感覚」を徹底理解したい人向けのお話。【VMW版-補完】

喉ちんこの上がり過ぎを治そう

 この記事は、VocalMagazineWebにて公開している連載、第13回:「息・鼻が詰まる感覚」の治し方を徹底解説!【歌声が詰まる原因 part3/6】の補完記事となっています。トレーニングメニューは【VMW版】にて紹介しています。


「息・鼻が詰まる感覚」の状況を整理整頓

 実際には鼻が詰まっているわけではないのに、歌っているときに「息・鼻が詰まる感覚」を感じることがあります。発声のバランスを崩した時だけ感じる人もいれば、年がら年中、話しているときにまで感じる人もいます。今回メインで説明するのは「喉ちんこの上がり過ぎ」が原因になる症状ですが、それがなぜ「息・鼻が詰まる感覚」を引き起こすのか、その仕組みをまずは理解していきましょう。

“実際に鼻が詰まっている”のと“鼻が詰まった感じがする”のは違う

 まず日常生活において“鼻が詰まる”のは、風邪による鼻水や鼻炎などで”鼻腔びくうが狭くなったり鼻腔が塞がれ、“空気が通りづらくなる”ことで起こります。発声において、実際には鼻が詰まっているわけではないのに“鼻が詰まった感じ”がするときは、風邪や鼻炎のときと似たような“空気が通りづらくなる”状況が身体で起きているということになります。

共通するのは“空気が通りづらい”という点

 “実際に鼻が詰まっている”のと“鼻が詰まった感じがする”状況、それぞれをイラストで解説しましょう。前者は“鼻腔の中が詰まっている”のに対して、後者は“鼻腔への扉が閉じている”状態です。それぞれ“空気が通りづらい”という点では同じですが、状況は異なります。

“鼻腔への扉”が「喉ちんこ」

 この“鼻腔への扉”が「喉ちんこ(軟口蓋なんこうがい)」であり、これが完全に上がって出入口を塞いでいると、鼻腔を介した呼気こき吸気きゅうきはできなくなるので、結果として“鼻が詰まったような感覚”が起こるのです。
ここでは“問題のある症状”として扱っていますが、この「喉ちんこの上がり過ぎ/軟口蓋の完全な挙上きょじょう」が“完全悪”かというと、そうではありません。実際に発声を改善するアイテムとして役に立つケースが多々あります。ただ何事も“やり過ぎ/過剰”は良くありません。次は具体的な発声の状況の“良し悪し”を見ていきましょう。


「軟口蓋の挙上」の良し悪し

 喉ちんこを上げることが、発声にどんな影響を及ぼすのか、デメリットの裏にあるメリットも合わせて説明します。

1.「ま/m行」「な/n行」「が/ng行」が発音しづらくなる

 「ま/m行」「な/n行」「が/ng行」はいわゆる”鼻にかかる・鼻に抜ける”発音です。鼻腔から声や息を通さなければ発音することができないこれらの子音しいんは、鼻が詰まっている状態では通り道が無くなって声が詰まってしまいます。普段、この3行で話し声や歌声が詰まり気味になってしまう人の改善策は「鼻腔にウィスパーボイスを通す練習」です。喉ちんこを下ろして、鼻腔に息混じりの声を流します。閉鎖が強めの声で練習するより、息の通りの良さを感じることができます。
 その反面、実は「鼻炎の状態の方が歌いやすい」という人がいるのもまた事実です。これは上記の「ま/m行」「な/n行」「が/ng行」以外に限った話になるのですが、この状態の方が”声が散らずに“集まりやすい”、”響かせやすい”、”ブレスが続きやすい”などの特性も持っています。
 なので、これらの問題に対する回答を厳密にすると、『「ま行」「な行」「が行」の子音の発音の瞬間だけは”喉ちんこは降ろして“、発声における他の時間は”喉ちんこを上げ気味にする“と良い。』となります。

2.どんな発声・発音でも詰まりやすくなる

 “風邪や鼻炎で鼻腔の中が詰まっている”状態だったとしても、この場合は口腔から空気のやり取りが可能です(「ま行」「な行」「が行」以外は)。でも、“喉ちんこが完全に上がって鼻腔への扉が閉じている”状態は、扉をキツく閉じるほど、連動により声帯も閉じて息も止まってしまいます。なので後者の状態では、声帯が閉じ過ぎる「喉詰のどづめ声」も誘発しやすくなり、その程度によっては「声が詰まる」症状を悪化させる危険性があります。この場合の解決策は「喉ちんこを下ろす」作業だけでなく「ウィスパーボイス」も中和剤になってくれます。
 その反面、普段から息が無駄に流れてしまったり漏れてしまったり、声が散りやすい人にとっては改善策となり得るのが、また面白いところです。「エッジボイス」も喉ちんこ上げをしていた方が出やすくなります。エッジボイスは空気が少ないときに発生する原理のものだからです。
 このように発声は表裏一体です。どんな作業もバランスと程度の調整が重要になります。

3.特に地声は硬くて大きい声しか出せなくなる

 特に地声(チェストボイス)において、喉ちんこを上げた状態での発声は、”声の張り”や”声の艶”を含んだ「パーンっ!」とした発声を作るアイテムになり得るのですが、その辺面、柔らかさを失わせ、”優しい声“や”小さい声“を出しづらくさせる性質を持っています。そして”喉ちんこを過度に上げ過ぎた発声“は、”声の割れ“や”声の散り“を含んだ「ただ叫んでいるような」発声になります。
 解決方法はやはり”喉ちんこをある程度下ろすこと“です。これによって音色は丸みを帯び、発声の感覚も柔らかく感じることができます。このあたりにも「発声はバランスである」の一面が現れていますが、出したい声によって”喉ちんこをどれくらい上げ下げようとするのか“の調整ができるようになると良いということです。

4.音色が深い声にはなっているが、分厚く、重たい

 喉ちんこが上がることと、喉仏が下がることには深い関係があります。「喉ちんこが上がることによって喉仏は下がりやすくなる」ため、音色は“深い”“太い”“暗い”ものになります。さらに上記の2.の原理により声門閉鎖は強くなるため、その程度によっては“分厚い”“重い”声になる傾向があります。この状態は長距離を走って乳酸が溜まるような疲労感を生みます。
 “喉仏が下がる”という点においては「ノド上げ声」などの解決策にもなりますので、これも適度な強度とバランスを取れれば問題のないものになります。


喉ちんこを下げるトレーニング

 それでは、喉ちんこを下げるエクササイズは【VMW版】に戻ってご確認ください(‘ω’)ノ。

第13回:「息・鼻が詰まる感覚」の治し方を徹底解説!【歌声が詰まる原因 part3/6】

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